2023年度改正予定 相続登記の義務化など重要事項まとめ

※このコラムは動画でも解説しています。


2021年2月10日に法制審議会にて、長年登記名義が変更されず放置されている所有者不明土地の解消策として、相続登記の義務化などを盛り込んだ民法と不動産登記法の改正要綱が法務大臣に答申されました。

 

現在、所有者の不明な不動産が社会問題化しています。所有者不明の土地の広さはなんと410万ヘクタール、九州の面積より広いのです。所有者不明になる原因の約7割が相続登記の放置、残りの約3割が登記した後に引越しをしても住所変更登記をしていないことなどとなっています。

 

相続登記など不動産の権利の登記については現行法上はいつまでに登記しなければならないといった期限の定めはなく、放置していても罰則のようなものはありません。相続税のように期限があるものは皆さん慌てて行うのですが、相続登記に関しては期限の定めがないので後回しにされてしまうことも多く、登記名義を亡くなった方のままにしている間に更なる相続が発生して関係者がどんどん増えて収集がつかなくなり、結果、現在の所有者が誰であるか不明になってしまうという事態が起こります。

 

そこで、2017年からこういった問題を解消するために、法改正の動きがあったのですが、今回の改選案は2021年3月に閣議決定されて国会で成立した後、2023年度に施行される予定です。いよいよ相続登記義務化まったなしです。他にも今回の改正要綱の主だったものについてまとめました。

 

1.相続登記の義務化

亡くなった被相続人名義不動産について、相続人は自身が相続したことを知った時から3年以内に相続登記をしなければならなくなります。正当な理由なく相続登記を怠った場合は10万円以下の過料が科される予定です。

 

2.遺産分割協議の期限設定

遺産分割協議の期限を相続開始から10年と定めて、10年を経過しても遺産分割協議が未了であれば原則として法定相続分に従って分割することになります。相続発生前に財産を多く貰っていた場合の特別受益や被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人に対する寄与分は考慮できなくなってしまいます。

 

3.相続人申告登記制度(仮称)の創設

遺産分割協議がまとまらずに速やかに相続登記ができない場合は、相続人であることを申告すれば相続登記をする義務を免れることができます。相続人申告制度を利用した場合には法務局が登記簿に申告した相続人に住所や氏名などを記録します。その後、遺産分割協議がまとまったら、その日から3年以内に登記しなければなりません。

 

4.死亡者名義の不動産一覧を行政が発行

現在でも市区町村役場で名寄帳という、その人が持っている固定資産税が課税されている不動産の一覧を取得することができます。ただし私道など固定資産税の課税されていない土地の記載がなかったりすることもあるので、名寄帳だけで被相続人の全ての不動産を把握することはできない場合があります。その為、権利証や判明している土地の周辺登記簿を調査する必要があるのですが、法改正後は法務局で死亡者名義の不動産の一覧を発行してもらえることになります。

 

5.住所変更登記の義務化

個人や会社の氏名や住所・商号や本店所在場所が不動産登記簿上から移転等して変更された場合に2年以内に住所変更登記をしなければ5万円以下の過料が科される予定です。なお、法務局が住民基本台帳ネットワークや会社などの法人情報管理システムから変更を把握した時は法務局の判断で変更登記ができるようになるとのことです。

 

6.所有者の生年月日や海外居住者の連絡先の提供

新たに不動産を取得する人(法人以外)は、登記申請の際に生年月日の提供を求められることになります。登記簿上は住所氏名のみの記載となっていますが、生年月日も登記されるかというと、そういうことではなく、法務局内部のデータとして扱われるようです。なお法人に関しては、会社法人等番号が不動産の登記記録にも記載されることになります。

新たに不動産を取得する人が海外居住者の場合には、国内の連絡先となる人(法人含む)の住所や氏名などの登記が必要になります。連絡先となる人は第三者でも大丈夫なのですがその人に承諾が必要になり、かつ国内に住所のあることが要件となります。

 

7.土地の所有権放棄

建物が建っていないことや土壌汚染が無いことなどいくつか要件はあるのですが、放棄可能要件を満たしていれば法務大臣に国庫への帰属させることについて承認をもとめて、認められた場合は所有権を放棄することが可能となります。ただし、相続人が審査手数料と10年分の管理負担金を納入しなければならない

 

以上、主だったものを7つ挙げました。司法書士としてはやはり一番気になるのは相続登記の義務化でしょうか。現行法上も不動産登記では表題登記という、土地や建物の所在や面積などの登記があるのですが、これについては登記しなければならない義務があり、怠ると10万円以下の過料がかかることにはなっています。

しかし、実際は表題登記の登記義務については形骸化していて、表題登記を怠った場合に過料を払ったという話しは聞いたことがありません。表題登記は主に不動産の存在を公示して固定資産税などの課税の為に求められている登記手続きになるのですが、表題登記がなされていない場合であっても市区町村で独自に調査して固定資産税の課税はされています。

 

私見ですが、今度の法律改正による相続登記の義務化については登記を怠った場合の過料はしっかり請求がくると思います。それほど所有者不明不動産は社会問題化しているので、最初から甘くして制度を形骸化するようなことはしないと考えられます。

 

法律改正前の現在でも相続登記を放置した場合には様々なデメリットがあります。

相続登記を放置した場合のデメリットについて

放置していて問題のない手続きではありませんので、この記事を読んでいただいて今後の改正のことを知ったことをきっかけに、もしいつかやろうと思って放置しているような不動産の相続手続きがあるようでしたらご相談をいただけたらと思います。

この記事を書いた人佐伯知哉(さえきともや)司法書士紹介ページ

司法書士法人さえき事務所の代表司法書士。
主に相続関係の手続き、相続の生前対策(遺言・家族信託など)、不動産の登記、会社法人の登記を中心に業務を行っております。今後はさらに遺産相続問題に先進的に取り組む事務所を目指しています。

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