相続のプロが教える不動産の遺産分割テクニック②

※このコラムは動画でも解説しています。


前回に引き続き、相続のプロである司法書士が不動産の相続でよくあるお悩みについてプロの視点からの解決策をご提案します。

 

今回のテーマは相続時に発生する税金について。

 

遺産分割のやり方によって課税される税金が変わることがありますが、場合によってはかなりの差額となる可能性も出てきます。少しでも課税される税金を抑えるためのポイントについて解説していきますのでご一読ください。

事例:資産価値5,000万、売却益3,000万円の不動産を2人で相続

具体的に以下のような事例を想定します。

 

被相続人A(父)

相続人B(長男):父と同居

相続人C(次男):父と別居

 

Aさんが死亡し、5,000万円の資産価値のある自宅不動産(AさんとBさんが住んでいた家)が相続対象となりました。

 

不動産は取得時の価格は2,000万円です。つまり、この不動産を売却した場合3,000万円の売却益に対して譲渡所得税が発生することになりますね。

 

BさんとCさんは話し合いの結果、この不動産を売却し、現金化した後半分ずつ分配する形をとることにしました。

 

こういったケースにおいて、譲渡所得税を軽減するためのテクニックについて解説します。

 

手続き1:何もせず法定相続分で登記し、売却する

まず、特別なことを一切行わず法定相続分で登記した後、売却したケースについて解説します。

 

遺産の不動産はBさんとCさん共有の資産となり、売却して5,000万円の現金が得られたものを約束どおり等分すると、2,500万円ずつの現金が得られます。

 

問題は、この売却に際して発生する譲渡所得税。売却益が3,000万円発生しており、その利益を半分ずつ受け取っているため、BさんCさんそれぞれの課税対象となる売却益は1,500万円ずつです。

 

実はこの不動産に住んでいたBさんには3,000万円の居住用不動産控除の枠があります。今回のケースで言うと1,500万円は完全に枠内に収まるため、譲渡所得税は課税されません。

 

一方で、居住していなかったCさんはこの控除が適用されないため、売却益1,500万円に対して約20%(※長年家族が住んでいた家なので「長期譲渡」と考えます)の課税を受け、300万円程度の納税義務が生じてし<まいます。

 

なお、今回は特別な手続きを行わず法定相続分で登記したことを前提に解説していますが、テクニック①で解説した「代表相続人」を設定し換価分割を行った場合においても結論は変わりません。

 

手続き2:代償分割を使うことで譲渡所得税を節税

今回のようなケースにおいて「代償分割」という仕組みを使うことによってBさん、Cさん両方の譲渡所得税を非課税にすることができます。

 

代償分割とは、対象となる遺産の分割にあたって特定の相続人(複数の場合も含む)が現物を取得する代わりに、現物を取得しない相続人に対してその対価を支払うような遺産分割方法です。

 

例えば、

 

①:BさんがCさんに2,500万円支払い、5,000万円の不動産を単独で相続する

②:CさんがBさんに2,500万円支払い、5,000万円の不動産を単独で相続する

 

といった形です。

 

今回の場合、居住用不動産控除を使えるBさんが不動産を取得した方が明らかに合理的ですね。

 

①の形を取った場合、Bさんは譲渡益3,000万円に対して控除枠3,000万円の満額が相殺されるため、譲渡所得税は発生しません。

 

一方のCさんは代償分割として現金を受け取っていますが、不動産の売買には関与していないため、譲渡所得税の課税に関してはそもそも対象となりません。

 

つまり、代償分割を活用し、譲渡益をBさんの控除枠の中に全て入れ込んでしまうことによってBさん、Cさんともに譲渡所得税を支払わないで済む形が作れます。

 

代償分割の注意点

今回のような特定の相続人が売却益に関して控除枠を利用できる場合などは代償分割を使うことによって、全体で発生する譲渡所得税を大幅に軽減することが可能です。

 

ただし、代償分割を行うにあたっても注意点があるため解説します。

相続人の間の関係性

代償分割を行うためには、条件となる債務が履行されることが大前提です。今回の場合、BさんがCさんに2,500万円支払うことですね。

 

こういったお金のやり取りがスムーズに行われるためには相続人の間の関係性も重要となってきます。

遺産分割協議書に代償分割であることを明記する

代償分割を取ることで譲渡所得税を大幅に軽減、もしくは非課税とできる場合がありますが、このような形を取る場合は遺産分割協議書に「代償分割を行う」ということを明記しておくことが重要です。

 

何も明記せず代償分割のような流れを行った場合、BさんからCさんに支払われた2,500万円が「贈与」とみなされる可能性があります。

 

2,500万円が贈与として課税対象になると、譲渡所得税約300万円を節税したのが全く無意味になるほどの贈与税が課税されてしまうため、くれぐれもご注意ください。

まとめ

今回解説した事例のように、特定の相続人が課税の控除を受けられる場合、その相続人に特定の現物の遺産を相続させ、他の相続人は対価を現金で受け取る「代償分割」で大幅な節税が実現する場合があります。

 

本来発生するはずであった課税を合法的に軽減できる可能性があるため、似たような事例に該当する場合はぜひ具体的な選択肢の一つとして検討されてみてはいかがでしょうか?

 

その際、遺産分割協議書にその旨を明記しなければ逆に大幅な課税を受ける可能性もあるため、忘れないようにご注意下さい。

この記事を書いた人佐伯知哉(さえきともや)司法書士紹介ページ

司法書士法人さえき事務所の代表司法書士。
主に相続関係の手続き、相続の生前対策(遺言・家族信託など)、不動産の登記、会社法人の登記を中心に業務を行っております。今後はさらに遺産相続問題に先進的に取り組む事務所を目指しています。

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