登記されていない建物の相続登記

相続が発生して不動産の名義を変更する、いわゆる相続登記のご依頼をいただく中で、一戸建て住宅等の建物の登記が存在しないことがあります。

マンションや最近建築された建物の場合は大丈夫なのですが、20~30年以上前に建てられた建物に多い傾向があります。

さて、そんな未登記建物の相続登記はどのようにすればいいのでしょうか。

未登記建物とは

不動産登記法という法律で建物を新築した場合には登記をしなければなりません。

不動産登記法第47条第1
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

建物の登記の種類は2種類ありまして、下の登記簿の見本を見てもらえるとわかり易いと思います。

まず、登記簿の一番上に表題部という部分があります。
建物新築時に登記しなければならないのは、この表題部の登記です。
表題部の下に権利部(甲区)、権利部(乙区)とありますが、ここの部分の登記は登記義務はありません。
つまり放置していても罰則は無いということです。
逆に表題部の登記は条文のとおり、しなくてはならない登記ですので、放っておくと過料(罰金のようなもの)の制裁があります。

未登記建物とは、この表題部の登記がされておらず、まだ登記簿がこの世に誕生していない建物のことになります。

未登記建物かどうかの判断はどうすれがいいのか

さて、未登記建物とは何かお分かりになったと思いますが、「じゃあ、うちの家が登記されているかどうかはどうやって調べればいいのよ」という疑問が出てくると思います。

まず、建物の権利証があるかどうか確認して下さい。
建物の権利証があればそれは間違いなく登記されている建物です。
なぜなら、登記されないと権利証は発行されないからです。

でも一般の方で権利証の中身をきちんと見られる人はいないと思います。
「じゃあ言うな!!」というツッコミがきそうですが、まあ落ち着いて下さい。
権利証の有無、内容が分からなくても方法はあります。

次の方法としては、最寄の法務局で登記簿謄本を取ってみるということです。
登記簿謄本が取れなければ自動的に未登記建物ということになります。
でも、登記簿謄本を取るには建物の家屋番号が分からなければなりません。
もし、未登記建物の場合だと家屋番号なんかはそもそも存在しませんし、そうじゃなくても家屋番号ってなんのこっちゃ分からないという人がほとんどです。
これもご安心下さい。
法務局の窓口で家屋番号が分からない旨と調べたい建物の住所を伝えれば調べてくれます。親切ですね。

さらに、法務局が遠くて行くのが大変、法務局に行くのが面倒くさいというそこのあなたに朗報です。
もう一つ方法があります。
それは、毎年4~5月ごろくる「あれ」をみるのです。
「あれ」です、そう「あれ」。
固定資産税の納税通知書です。
ここには固定資産税を支払っている不動産が表示されているのです。
ここの建物の部分を見てください。
固定資産税は未登記建物であっても課税はされます。
ですので、建物の記載はあるはずです。
どうでしょうか?
そこの建物の家屋番号の部分が空欄になっていませんか??
はい、未登記建物です。

未登記建物の相続登記はどうするのか

ここまでで相続した建物が未登記建物がどうかがお分かりになったかと思います。
では、未登記建物の相続登記はどうすればいいのでしょうか。

まず、相続登記とは被相続人から相続人へ所有権を移転する登記のことをいいます。
名義変更というやつです。
名義を変更するのですから、前提として名義が存在しないといけません。
でも未登記建物ですので名義が無いのです。
さて困りましたが、方法はあります。
こういった手続きでは難しいことはあるのですが不可能なことはないのです!
やりようはあります。

まず、登記というものは順を追ってやっていかなければなりません。
過程をすっ飛ばしてやることはダメなのです。
ですので、原則どおりこの未登記建物について表題部の登記を申請しなければいけません。
そしてこの表題部の登記ですが、実は登記なのですが司法書士ではすることが出来ないのです。
代理権がないので仮にやってしまうと法律違反でしょっぴかれます!

表題部の登記は土地家屋調査士という専門家が行います。
まったく聞いたこともない方もいるかもしれません。
司法書士よりマイナーだと思います(笑)
土地家屋調査士の先生方ゴメンなさい!!

この土地家屋調査士にやってもらうのです。
普通は、建物新築時にハウスメーカー等が手配してくれるのですが、未登記建物の場合は多くは注文住宅を直接工務店に依頼しているケースが多いです。
多分、工務店の方も表題登記のことは伝えるのでしょうが、「やっておいて下さいね~」くらいのものでお客さんに忘れ去られたまま放置されているのでしょう。
そりゃ建物建てる時って色々決めたり、色んな手続きがあるので何を言われたかなんて覚えてないですよね。

ということで、まずは土地家屋調査士の出番です。
この時に必要な書類なのですが、これはケースバイケースです。
新築時に表題部の登記をやってしまうケースですと定型の必要書類があるのですが、長年放置されていて、また建築主は亡くなっているケースですので、土地家屋調査士も法務局と申請前に事前協議して何を添付すれば登記を無事に通してもらえるかを話し合います。
一般的には、建物を建てたときの建築確認関係の書類や工務店から発行された領収書などがあるといいですね。

そして、表題部の登記が完了したら我々司法書士の出番です。
この時点では、まだ表題部しか登記簿が存在しておらず、所有者が誰であるか法的に公示されている状態ではありません。
ここで司法書士が所有権保存登記という登記を申請します。
そうすると、新たに権利部が設けられて、そこに所有者として相続人の名前が登記されます。
ここまで来て、未登記建物の相続登記が完了ということになります。

未登記建物の相続登記を依頼する場合は、土地家屋調査士と司法書士の両方に頼まなければなりませんが、ワンストップで対応してくれる事務所を選ぶと楽に手続き出来ます。

まとめ

  • 登記されていない建物(未登記建物)はそのままでは相続手続きが出来ない
  • 未登記建物がどうかは、権利証の有無、登記簿謄本が取れるか、固定資産税の納税通知書のいずれかを確認すれば分かる。
  • 未登記建物の相続登記は土地家屋調査士と司法書士の2つの専門家の関与が必要でワンストップで対応してくれる事務所を選ぶと楽。

佐伯知哉(さえきともや)

司法書士さえき事務所の代表司法書士。
主に相続関係の手続き、相続の生前対策(遺言・家族信託など)、不動産の登記、会社法人の登記を中心に業務を行っております。今後はさらに遺産相続問題に先進的に取り組む事務所を目指しています。
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