事業承継に民事信託(家族信託)を使う方法

上場企業や大企業では株主(オーナー)と経営者が異なることが多いですが、当事務所がある町田市にある会社を含めて日本のほとんどの会社は中小企業です。

中小企業の多くは、株主と経営者が一致しますので、現社長からの後継者への事業承継は中小企業において特に由々しき問題です。

多くの中小企業では、何も対策をとらないまま、現社長が認知症になったり、死亡した後に始めて問題が顕在化して慌てることになります。

事業承継で何も対策をとらないとどうなるか?

現社長が認知症にもならず、経験豊富ですぐに経営権を譲ることが出来る後継者がいて、亡くなった後も遺産が現金を含めて豊潤にあり、相続人の仲も円満で何ら揉めずに速やかに遺産分割協議が成立することが約束されているのであればあまり問題はないでしょう。

ですが、多くの方がこんな恵まれた状況にあるわけではありません。

例えば認知症になったり、遺産が自社株がほとんどであったり、相続人が不仲であったりするわけです。

 

社長が認知症になってしまうと、中小企業では「オーナー=社長」ですので、株主総会を開催することができなくなり、新たな社長を選任することができなくなります。

そういった場合には成年後見人等を裁判所に選任してもらうことになりますが、成年後見人が選任されるまで数ヶ月に期間を要しますし、その間に会社の運営はどうするのでしょうか。

 

また、社長の死後に遺産分割協議が長期化して会社の株式の取得者が決まらないような状況でも株主総会が開催できずに会社の重要な事項を決議できない状態が続くことになります。

 

従来であれば、任意後見契約や遺言によって認知症や死後の対策を取ったり、拒否権条項付の種類株式、いわゆる黄金株を発行したりして、これらの事業承継におけるリスク対策を提案していたのですが、民事信託を使えばもっと柔軟に対策をすることができるようになりました。

民事信託(家族信託)を用いた事業承継対策

事業承継の際に、一般的には現社長の生前では株式を後継者へ贈与等によって移転することになります。

株式を生前贈与すると、株価が下がったタイミングで実行すれば贈与税も少なく後継者への事業承継が可能となります。

また、平成30年度税制改正において事業承継税制の特別措置で従前より税金的な負担が少なくなったことから顧問税理士からも自社株の生前贈与について提案を受けている会社もあるかもしれません。

 

ですが、税制的な優遇があったとしても生前贈与では、結局現社長は株主ではなくなってしまいますので会社の方針を決定する株式の議決権が無くなってしまいます。

特に一代で会社を築いてきたような社長さんだと、自分の目の黒いうちはまだまだ会社の舵取りは自分でしたい、でも事業承継もしなきゃならないと板挟みになっているかと思います。

 

そこで民事信託を使ってこの問題を解決するスキームがあります。
民事信託では、委託者、受託者、受益者という3者が登場します。
民事信託の基本についてはこちらを参照して下さい。

 

通常は委託者Aさん、受託者Bさん、受益者Aさんといった形で「委託者=受益者」で受託者が別の人という形になることが多いです。

委託者と受益者が異なる場合は、委託者から受益者への財産の贈与とみなされますので基本的には、こういった形は避けることが多いです。

 

ですが、今回の事業承継の場合には、次のような信託設計をします。

委託者Aさん、受託者Aさん、受益者Bさんというものです。

Aさんは現社長、Bさんは後継者とします。

信託契約は委託者と受託者で締結するのですが、今回は「委託者=受託者」です。

同じ人物になるので「信託契約」ではなく、「自己信託(信託宣言)」というものになります。

通常の信託契約では、契約は公正証書である必要はないのですが、自己信託の場合は必ず公正証書にしなければなりません。

 

「委託者=受託者」にすることによって、会社の舵取りをする能力は残したまま、株の価値(受益権)については先に後継者へ移すことが可能となります。

 

こうすれば、遺言のように死亡時に後継者へ株式が移転するわけではないので、株式の高騰などのリスク(相続税が高くなる)を少なくして、適宜のタイミングで株式の譲渡が可能となりつつ、会社経営の舵取りは現社長に残すことができます。

ただし、委託者と受益者は別の人になるので、この時に贈与税は受益者たる後継者に課税されます。このあたりは生前贈与と考え方は同じになるのですが、肝は現社長が株式の議決権を失わないことにあります。

 

その後、後継者に会社を任せて良いタイミングになったら信託を終了させて株式の議決権(会社の舵取り)も後継者へ移行させれば良いのです。

また、もし現社長が死亡した場合にも、信託は終了し、株式は受益者たる後継者が取得するように定めておけば、遺言の効力も持たせることができます。

 

通常の遺言であれば、死亡の時期は分からないので、いつ後継者が株式を取得できるかは不明ですし、遺言は単独で残せる分、単独で撤回も可能なので、後継者としては本当に自分が事業を承継できるのか不安なこともあると思います。

 

このあたりの不安を解消しつつ、スムーズな事業承継を法律的なリスクを回避しながら実行できるのが家族信託のメリットです。

最後に

この他にも、遺産のほとんどが自社株の場合などでは、遺留分の問題があるようなケースがあったりします。

このあたりはまた別の機会に記事にしたいと思いますが、遺留分問題があるようなケースでも民事信託を使ってうまく解決できる方法もあります。

民事信託は自由度が高く、色々な生前や相続発生後のお悩みを解決できることも多いので是非ご相談下さい。

 

 

この記事を書いた人佐伯知哉(さえきともや)司法書士紹介ページ

司法書士さえき事務所の代表司法書士。
主に相続関係の手続き、相続の生前対策(遺言・家族信託など)、不動産の登記、会社法人の登記を中心に業務を行っております。今後はさらに遺産相続問題に先進的に取り組む事務所を目指しています。

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