古い戸籍が破棄されていて戸籍が全て揃わない場合

事例

被相続人Fさんは遺言で、生前お世話になったKさんに不動産を遺贈することにしていました。
この不動産を遺言執行者Tさんによって売却換価した後に、Kさんへ現金を相続させるという、いわゆる清算型の遺贈でした。
Fさんは配偶者と子がなく、第二順位の相続人の直系尊属(親、祖父母)も死亡しているので第三順位の兄弟姉妹が法定相続人になります。
相続人が第三順位までいく場合は戸籍の量も膨大になることが多いので、戸籍の収集から不動産の名義変更(相続登記)まで遺言執行者であるTさんが当事務所にご相談に来られました。

当事務所で解決

今回の事例では清算型の遺贈のため、まずは法定相続人全員の名義に相続登記をしなければなりません。
その為、以下の戸籍が必要になります。
※ここでの「戸籍」とは戸籍謄抄本・除籍・改製原戸籍の総称のことです

  • 被相続人の出生~死亡までの戸籍
  • 第二順位の相続人の出生~死亡までの戸籍
  • 第三順位の相続人の戸籍

ですが、被相続人Fさんは昭和初期の生まれのご高齢で亡くなられています。
今回の場合ですと、その親の戸籍も出生まで遡って取らなければなりません。
戸籍の保存期間は平成22年からは150年に変更されましたが、それまでのものは80年で破棄されています(役所によって取り扱いが若干異なるようです)。

ですので、いざ集めてみたのですがやはり親の戸籍は出生まで取ることが出来ませんでした。
戸籍を収集する意味は、相続人がこれだけいますという証明のためです。
戸籍が全て揃っていないということは、確実に相続人がこの人たちだけですという証明を成せないことになります。
では、これで手続きできないかというとそうではなく、今現在、戸籍上判明している相続人の全員から、「相続人は自分達以外に存在しない旨」の内容で上申書を作成し、相続人全員の実印の捺印と印鑑証明書を添付すれば法務局の相続登記は受理されます。

ただ、今回の事例のケースでは遺言執行者の権限に基づいて一旦法定相続人の名義に相続登記をするだけですので、遺産をもらえない法定相続人からの上申書への実印の押印や印鑑証明書の用意をしてもらう協力を得ることは難しい状況でした。

実際、この上申書はこれまで実務上つけていてもはっきり言って意味があるのか疑問でした。
だって、自分たち以外に相続人が絶対いないってわかります?
それに、今回の事例のようなケースではそもそも相続人の協力を得ることは非常に難しいです。

そこで、平成28年に以下のような通達が出ました。

(平成28311日付け法務省民二第219号法務省民事局長通達)
相続による所有権の移転登記(以下「相続登記」という。)の申請において、相続を証する市町村長が職務上作成した情報(不動産登記令別表の22の項添付情報欄)である除籍又は改正原戸籍(以下「除籍等」という。)の一部が滅失していることにより、その謄本を提供することができないときは、戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え、除籍等(明治5年式戸籍(壬申戸籍)を除く。)の滅失等により、「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書が提供されていれば、相続登記を受理して差し支えない。

つまり、戸籍が全て揃わない場合でも、役所の保存期間満了により戸籍を破棄した旨の証明が取れれば今までのように上申書を添付しなくても相続登記は出来るようになったのです。
この通達のおかげで今回の相続登記は無事完了することが出来ましたが、戸籍以外にも相続登記には住民票や戸籍の附票といった書類も必要になってきます。
これは被相続人の登記簿上の住所と死亡時の住所を証明(戸籍には住所の記載がないため)するために必要な書類なのですが、住民票や戸籍の附票は保存期間が5年と短く、相続が発生してから放置しているとすぐに「書類が揃わなくてどうしよう」といった状態になってしまいます。
もちろん、こういった場合でもやりようはあるのですが通常より複雑になったり法務局との事前協議が必要になったりします。
やはり、相続登記は早めに手続きされるようお勧めします。

この記事を書いた人

佐伯知哉(さえきともや)

司法書士さえき事務所の代表司法書士。
主に相続関係の手続き、相続の生前対策(遺言・家族信託など)、不動産の登記、会社法人の登記を中心に業務を行っております。今後はさらに遺産相続問題に先進的に取り組む事務所を目指しています。

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