遺言書の記載が曖昧だった件

事例

依頼者は被相続人Kさんの従兄弟の子であるSさんです。
従兄弟の子どもは『従姪』というらしいです、私も本件で始めて知りました。
Kさんの遺言書でSさんが遺産をすべて相続することになっていましたが、遺産の特定方法、相続する人(受遺者)の特定方法が曖昧でした。
具体的には、不動産の記載が『住居表示』であったこと(正式には土地なら地番、建物なら家屋番号で記載します)、受遺者の記載が本来であらば『従姪S』とし、生年月日や住所も記載するのですが、『姪S』のみの記載となっていました。
この遺言書を用いて、KさんからSさんへ不動産の名義変更ができないかというご相談でした。

当事務所で解決

本件の一番のネックはこの遺言書が手続きに使えるかどうかというところでした。
自筆証書遺言だったので、まずは自筆証書遺言の要件を満たしているかチェックです。

  • 全文が遺言者の自筆
  • 日付の記載
  • 氏名と押印

上記全て整っていたので、形式的には有効です。
ただ、前述のとおり曖昧な記載がいくつかあったので、不動産や受遺者の記載方法で特定できていないとされて手続きに使用できない可能性も考えれました。
公正証書遺言であれば、作成段階で公証人が必ず関与するので、こういった問題は生じません。また、自筆証書遺言でも司法書士や弁護士に依頼してもらえれば、同じくこういってことにはならないです。
今回の遺言書のニュアンスとして包括遺贈と取れる記載があったので、包括遺贈とすれば、遺産の全てが対象になるので、不動産の記載方法が曖昧でも問題はありません。
また、Sさんは姪ではありませんが、従姪ですし、親族に同姓同名の人はいなかったので、このあたりはうまく話して登記所を納得させました。
登記の申請前に、微妙な案件の場合は事前に相談を持ちかけて、登記申請を問題なく通せるかを担当者と打ち合わせをしておくのが実務です。
ナマの事件を扱うので、いつも教科書どおりには行きません。
説明の仕方も気を使って、なるべくこちらの要望どおりに通せるような質問の仕方を工夫します。
無事に申請前の相談はこちらの要望どおり通してもらえるように言質を取ったあとに、自筆証書遺言の検認手続きを家庭裁判所で行って、登記も申請して無事完了しました。
ちなみに、本件のAには子どもがいなく、直系尊属も死亡していたので遺留分の心配はありませんでした。

この記事を書いた人

佐伯知哉(さえきともや)

司法書士さえき事務所の代表司法書士。
主に相続関係の手続き、相続の生前対策(遺言・家族信託など)、不動産の登記、会社法人の登記を中心に業務を行っております。今後はさらに遺産相続問題に先進的に取り組む事務所を目指しています。

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